2008年5月 3日 (土)

将来やりたいことを見つけるということ

Chido83c02s 上市台地の末端に位置する水戸一高から望む筑波山と夕暮れの水戸市街。1983.11撮影。現在はこの方向にマンションが建設され、眺望が遮られている。

母校での教育実習も残り1日になった、1989年の6月のある金曜日放課後、教育実習生による進路相談会が開かれた。教育実習生の1人だった僕も話をすることになり、十数人ほどの高3生を前に話をした。自分が地学をやりたくて教員の専門分野を調べ、大学を選んで進路を決め、1年自宅浪人して希望の大学に進み、何度かピンチに陥りながら希望の学科に進んで、いま将来に希望を持って卒業研究に取り組もうとしていることなどをかいつまんで話したような気がする。

僕の後に話をした、たしか1年下(僕は一浪したので教育実習も現役組より1年遅れた)の国立大文系の実習生だったが、「自分のやりたい学問が決まっている高校生なんて少数で、ほとんどの生徒は自分のやりたいことが見つからないまま、とにかく勉強していい大学に進まなくちゃ、という強迫観念で大学に進むのが当たり前だ」ということを言うので、びっくりし、かつ、かなり敵意を持った話しぶりに聞こえたこともあって、ショックを受けたことが印象に残っている。なんだか、まるで自分のやりたいことを見つけてそのために大学に進むのが、特権的なことのように聞こえて、非常に心外というか、相容れないものを感じたのを覚えている。

僕がそんなに場違いな話をしたかどうか、当事者にとっては定かではないが、その翌日、僕がお世話になっていた生物科の教員室に、「大学で地学をやりたいんですけれど・・・」と尋ねてきた高3生が2人いて、進路相談に関わることになったので、そんなに無駄ではなかったのではないか、と、少し救われる気がした。この2人はどちらも最終的に国立の理学部地学/地球物理学に進学し、専門を活かした仕事に就いていて、いまでも年賀状のやりとりがある。うち一人は僕のいた大学に入学し、僕のいた学科に進学し、僕のいた研究室に入って、いつの間にか僕より早く学位を取得し、僕より早く就職し、家庭を持ち、学会で活躍している。面白い因縁だ。

「自分のやりたいことを見つけて、そのために進学先を選び、大学に進む」ということが、果たして特殊な少数派なのか、そして他人にそういう生き方を期待してはいけないのか、時々思い返しては考え込む。自分が特殊例なのだとすると、自分を基準にして進路の選び方を語ることは不親切だということになる。僕は物事のとらえ方が基本的にかなりポジティブなので、自分のことを語ることが、自慢か、脳天気に聞こえることがあるのかもしれない。後になって考えると、わざわざ異論を述べた実習生には、それなりに悩みがあったのだろうし、ある種の嫉妬があったのかもしれない、と思うのだが、とにかく僕にはかなりショックな出来事として記憶に残っている。

いま、僕は大学の教員になり、学生たちの進路の相談に乗る立場になっている。もっとも、僕のところに来る学生は、ある程度自分で自分の進路を決めた上で相談に来る、しっかり者の学生ばかりであるという気がするが、僕がアドバイスしていいのかどうか、上記の経験もあって、心の中で少し悩みながら、もっともらしいことを言っている気がする。幸か不幸か、大学院以降、紆余曲折があって、僕の人生はかなり妙な経歴をたどったので、たぶんふつうの大学の先生とは違った見方や立場でコメントをできるという強みはあるのだが。

僕が自分の進路を決めるまでに、どんなことをして、何を感じ、どうしてその方向を選んだのか、また決めてから何を悩み、迷い、何度かリセットや引き返しを考えたことがあったのではなかったか、などとつらつら考えてみた。途中の思考過程は省略するが、結論は、「好きなことを見つけて、それを自分の人生の中で実現するためには、かなりたくさんの努力を要するし、それなりの犠牲を払うものだ」ということだ。厳しい言い方になるかもしれないが、「好きなこと、やりたいことが見つからない」というのは、それが見えてくるだけの努力をしなかったからだ、ということに過ぎない気がする。

学校や本での出会いから、これは自分がやりたい分野なのではないかと思い、興味を持って本を漁り、学問の成り立ちを知り、その分野のことを自分でやってみて、向いているかどうかを考え、やはり向いていないと思えば、別の分野に手を出してみて、うまくいくかどうか試してみる。その繰り返し、無駄な努力を数限りなく繰り返して、それで思いつく限りの可能性を試した上で、やはり自分にはこれが一番合っている、やっていて楽しい、という「何か」を自分で納得する。「やりたいことが見つからない」のは、そういうプロセスをきちんと経ていないからなのではないだろうか。

学校の勉強をきちんとやっていたら、必ず「やりたいこと」が見つかるわけではないのは当然なのだ。もちろん、幸運にも学校の勉強の中で見つける人もいる。ただ、僕はそうではなく、学校以外での学びが、僕の学びの骨格をつくり、自分の進路を決めたことは間違いない。学校で教わる勉強よりも、図書館の本を読みあさることや、友人を巻き込んでの化石採集や、映画制作や、創作活動にエネルギーを注いだ結果、高校時代の学校の成績は中くらい以下だったし、大学受験も一度失敗して自宅浪人するはめになった。でも、その無駄な努力こそが、自分の進路への確信を育てたし、映画制作や脚本執筆の経験は、仲間の中で唯一僕だけが、番組・映像制作で活用する機会を得ることができた。本当は、無駄なことなんて、ひとつもなかったのだ。

たぶん、いまなら件の実習生に、アドバイスできるような気がする。「やりたいことを見つけるには、それなりの努力・試行錯誤や失敗を繰り返す覚悟が必要で、それがなければ、いつまで経っても君の不満は解消しないのだよ。自分の頭で考え、自分に必要だと思うことを、自分の責任で、勇気を持ってチャレンジしてみなさい。」と。

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2008年4月24日 (木)

東京学芸大学

9615 4月から、学芸大の「地学概論」の講義を担当している。週1回、火曜5限の講義のために、往復3時間かけて国分寺に通っている。

学芸大は大学らしい、緑の多いキャンパスでうらやましい。講義そのものは必ずしもうまくいっているわけではなく、教員養成系特有の文化の違いもあって、毎週少々凹みつつも、めげずになんとか授業している。

まあ、ついつい内容を欲張って、わかりにくくなっていることは否定できないのだが、一方で、受講者の側がかなり受け身で、質問の時間を取っても無反応で、学ぶ姿勢としてどうなんだろう、と思う部分も多い。

質問が出ないのは、本務校の授業でも、ここ数年顕著な傾向としてある。その原因は、学生の変化もあるのだろうが、僕もだんだん歳をとって、学生と感性が乖離しつつあるのかもしれないな、と思うこの頃だ。

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2008年4月12日 (土)

変成岩で見えるものと見えないもの

9321 放送大学の教材用岩石薄片を、某氏に手伝ってもらって、偏光顕微鏡写真に撮りまくっている。これは片麻岩中の菫青石。Alの多い泥質岩起源の、比較的低変成度の岩石に、変成鉱物として含まれることが多い。

この薄片では、白雲母が生じているほか、一部が分解して繊維状の珪線石を生じているように見える場所がある。構成鉱物は他に、石英、斜長石、黒雲母など。

変成岩の構成鉱物の組み合わせは、原岩の残存結晶は別にして、変成度あるいは変成履歴を示しているが、目に見えない微量元素の組成は、原岩の特徴を残していることが多い。難溶性の元素の組み合わせをうまく使うと、後背地や火山岩の特徴が出せる場合がある。%単位の主要元素と異なり、微量元素の中には、2桁あるいは3桁、存在度が異なる場合があって、それは変成過程で物質移動があったとしても、水に溶けにくくかつその元素を受け入れる相が存在する限り、容易に消し去れるものではない。

泥質岩の難溶性微量元素組成を手がかりに、供給源の地殻の性質を読み取り、グループ分けする研究を、ようやく再開できそうだ。今年は新学科の学生募集であちこちの学校を回るついでに、サンプルを採取して、XRFの検量線の調整をもう少し追い込んで、きちんとしたデータを蓄積していきたいと考えている。

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2008年4月10日 (木)

東京都市大学

9309 サクラセンター前のしだれ桜。4/1午後。

例年より少し早い開花かもしれない。今年の新入生は武蔵工業大学だが、来年の新入生は東京都市大学の学生になる予定。

改称の経緯と名前のセンスにはいろいろ思うところがあるが、自然科学科の設置とセットになっていると、思うように言いたいことが言えなくなって、ストレスがたまる。

名前のごたごたはもういいから、中身の充実に力を入れないといけない。僕は海外体験実習の実施や教職科目の新設など、できるだけのことはやってきたつもりだが、どうも空回りしているような気がしている。今年は外回りの学生募集と、自分の研究調査に力を入れることにしたいな。

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2008年4月 5日 (土)

写真大好き

8687 Naqalimare District Schoolにて。カメラを向けると、わっとこどもたちが集まり、この状態。撮影が終わると、大騒ぎしながらクモの子を散らすように去る。本当にフィジーの人々は写真が大好きだ。これを印刷して学校に送らないと。

次に行くときには、この学校で学生たちに特別授業をしてもらおうと思っている。先生たちは大歓迎なので、日時と内容を打ち合わせて準備しないといけない。問題は、こちらの学生がどのくらい来るか、というところなのだが。今年は武蔵工大だけではなく、学芸大でも声をかけてみるつもりだが、どの程度反応があるか、やってみないとわからないし、スタッフを巻き込めるかどうかも未知数。まあ、やってみるさ。

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2008年4月 1日 (火)

コーヒーの実

Arabicacoffee 調査地のタワタワンジ村周辺では、3月に行くと斜面にウコンが繁茂し、アラビアコーヒーの赤い実が林縁に目立つ。コーヒーの実が付くのは、時季はあまり問わないらしいのだが、雨季の方が多い気がする。

コーヒーの実の果肉はけっこう甘い。タネの部分が我々がコーヒーとして知っている部分だが、白くてつやつやしたものがこの赤い実の中に入っている。

今年もコーヒーの実がたくさんなっていた。余裕がなくて採集しなかったが、いつか学生たちと収穫して、焙煎して自前のコーヒーを煎れてみたいものだ。

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2008年3月14日 (金)

クロウズネスト

8728 フィジーに来ている。いつもの宿・クロウズネストに5泊。いま、最後の朝で、これからマナ島に移動。

昨日はUSPの院生兼TutorのSophieの修論の現地指導。心配だったので、義務を果たせてよかった。だが、4月に来るという再調査の前に、指示しておくことは多そうだ。

クロウズネスト前のラグーン。3月は潮の干満の差が大きく、けっこう高い位置まで海水が来ている。岸のすぐそばまで稚魚が回遊してくるし、数十cmの魚の黒い影も見える。

昨日から天候は荒れ気味。雷雨が断続的にやってくるようだ。いまも遠雷の音が響いている。

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2008年3月 4日 (火)

箱根火山

8328 日大と武蔵工大の化学教室合同の1泊旅行で箱根に行ってきた。

入生田の生命の星・地球博物館見学と、大涌谷の見学。大涌谷は、大学での午後の予定の関係で、僕は10分しか居られず、すぐにとんぼ返りだったが。

写真は大涌谷の崩壊防止の砂防ダム。ここには温泉の水源になっている、噴気と水の混合塔も多数設置されている。

熱水変質の進行過程での元素の挙動を確認するには、このような熱水変質地帯の岩石を持ち帰って、組成をフレッシュな岩石と比較するべきなのだが。次の課題かな。

博物館の展示解説はそれなりに好評だったようで、よかった。次は学生を連れてこないと。

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2008年2月18日 (月)

放送大学で地球科学実習

8265 放送大学千葉学習センターで、面接授業の地球科学実習を担当するために、前週から合計6回、通っていた。

内容は偏光顕微鏡の実習。昨年2月に中村先生から引き継いでから、2月、8月、2月と半年おきに実施していて、これが3回目。

職員の嶋田さん、アシスタントの齋藤さん、鈴木さんのサポートもあり、なんとか無事に実習を終えた。

この科目は申し込んでも抽選になって(顕微鏡の台数による制約で18名まで)、なかなか受講できないという、学生さんの不満も聞くし、また、3日間の実習では足りない、というもっともなご意見も頂戴する。しかし、専任教員ではない現状では、本務校の仕事で手一杯で、申し訳ないが年2回の集中講義が限度だ。来年度の本務校での地学実験の経験を活かして、薄片作りや野外実習とうまく組み合わせた実習を、将来的には組み立てていきたいのだが。

まずは顕微鏡で覗いた岩石や鉱物の世界に魅力を感じてもらうことと、岩石から情報が引き出せることのイメージを作ってもらうこと、とりあえずそれができればよしとせざるを得ないかな。それよりも、接眼鏡や対物鏡にときどきカビが生えるものがあるので、対策を講じないといけない。卒論発表が終わったらその作業にまた放送大学に行く予定。

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2008年2月11日 (月)

東京軽石層

8137 昨年末に降って湧いた卒論指導の仕事で、関東ロームの風化による物質収支を扱うことになり、等々力渓谷でサンプリングをした。

等々力不動尊の湧水のある崖の上部に、東京軽石層が露出しているが、ここはサンプルを採取できる状況にない。等々力渓谷の上流側で、ダメでもともとと思いながらサンプリングしていると、東京軽石層(TP)が手の届くところに露出しているのを発見し、採取できた。ここでは三浦軽石層らしき薄いオレンジ色の軽石層も、武蔵野レキ層の直上に観察できるが、確実ではない。

XRFで分析してみたが、完全に粘土化していて主成分元素は上下のロームと変わらない、粘土の組成になってしまっている。しかし、Nb/TiO2など、難水溶性の元素の比をとってみると、大磯丘陵で採取した新鮮なTPの延長線上に測定値がきれいに集中する。

おかげで、TPを使って風化前の組成と、風化・粘土化により溶脱が進んだ状態の組成を比較することができて、溶脱した各元素の量比を推定することができた。ロームだけだと、元の組成を決められず、いろいろなモデルを使わなくてはいけないので、起源の確実な軽石層で比較できたのはありがたい。

それにしても、質量の半分以上が失われた状態で、難水溶性の元素はきっちり元の組成比を残しているのがすごい。自然は嘘をつかないものだ。ちょっと感動した。

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